インテリアコーディネーター
川崎(旧姓:辻) 恵子 さん
 

5月にあった、とーく会の還暦旅行、是非参加したいと思っていましたが、その頃はこのホテルの新築工事の真っ最中で手が離せませんでした。
出席できなくて残念です。

外壁
エントランス
オープンしたばかりでしたので、お祝いのお花だらけでした。
フロント



福岡県を中心にインテリアコーディネーターとして活躍する川崎恵子さん(旧姓:辻)が福岡市内に新築されたホテルの内装を丸ごとコーディネートされました。

川崎さんはご存知の方も多いと思いますが、稲佐にある辻写真館のお嬢さん。
稲佐小、淵中の卒業アルバムも辻写真館の作成によるものでした。家業を継ごうと決心してその道の修業を進めていた彼女ですから、美しいものへのこだわり、美しくすることへのセンスははそのころから培われていたのだと思います。

新しいマンションの部屋や家具等を見ることが大好きな私(管理人)がこのホテルのまわし者ではなく、個人的な興味で川崎さんがやり遂げたお仕事を紹介します。



計画時の手書きのパース(市岡氏作)
完成写真

川崎さんはどこにも所属せず自宅を「office kei」という事務所にして、建築事務所と組んで仕事をしています。
このホームページで前にも登場していただきましたが、インテリアを専門の学校に行って学んだことはありません。

自宅を新築した時、ちっともこちらの希望をわかってもらえず、デザインだけを重視した提案をされて疲れ果ててしまいました。

それで住む人の立場、女性の使い勝手を考えた住宅に自分がかかわりたいと思い立って勉強を始めたとのことです。

現在は福岡ではかなり名前の知られたインテリアコーディネーターになっていらっしゃいます。

物件:ビジネスホテル
博多サンライトホテル 檜乃扇(ひのおうぎ)
住所:福岡市中央区清川2丁目6-23
電話:092-522-0080
2009年10月10日グランドオープン

ホテルは博多駅から1キロぐらいの場所にあります。中州にも歩いて15分、タクシーで数分ぐらいで出られるところです。

いつも仕事を一緒にしている設計事務所「アトリエムーン」の市岡氏より話があったのが昨年(2008年)の秋。

施主は福岡の祇園町というところで旅館を経営していましたが、そこを閉じてビジネスホテルを別の場所に作ることにしました。
その際、経営も50代の息子さんに譲られました。
元が旅館を経営していたということなので、新しいホテルも「和」を感じられるしつらえにしようと思いました。

それまではほとんどの客が男性の団体さんでしたが、これからは女性もターゲットにした造りにしなければいけないと思いました。
そこで川崎さんに「内装をやってみないか!」というお話があり、ホテルを手掛けるのは初めてでしたが、引き受けることになったということです。

ジェネレーション
ギャップ゚
最初に川崎さんたちが壁に突き当たったのがホテルのオーナーの先代の意向でした。先代からは器とか絵画などは前の旅館の時のものを使ってほしいという要望がありました。しかし、このようなものを作りたいというこちら側の構想とはジェネレーションの違いによるずれが生じていました。

さまざまな軋轢があり、「この仕事は私はやっていけない、お断りしよう!」と真剣に思う時期もありました。しかし施主を地道に説得し、相手方の希望も少しずつ入れながら、彼女は新しいコーディネートを提案し続けました。

右の写真が廊下に作った飾り棚。ウエーブのような棚も素敵ですが、オーナーが保有していた博多人形等が、その場所になくてはならないように見事に納まっています。

やがてオーナー家族とも信頼関係が築かれ、楽しく仕事を進められるようになりました。
今ではその先代も川崎さんに全幅の信頼を寄せていらっしゃるということです。

ビジネスホテルに
大浴場がふたつも!
このホテルはビジネスホテルですが、最上階に大浴場が二つあります。
オーナーがもともと旅館を経営していたということで、ビジネスホテルでも旅館の雰囲気を味わってほしいということで作られました。
ひとつはかわいいモザイクタイルを使った柔らかな印象のお風呂。もうひとつは角ばった形で縁にヒノキを使った男性的なお風呂です。
「男湯」「女湯」ののれんをかけていますが、これは毎日替えられますので連泊したら二つのお風呂を楽しむことができます。
また、それぞれのお風呂の外に趣向を凝らした露天風呂も作られています。
≪大浴場その壱≫
お風呂上り涼みスペース(露天)
露天風呂

≪大浴場その弐≫
ヒノキを使った湯船
露天風呂

フロアごとに
違う顔
3F 和室のフロア
4F 和室のフロア
5F ドイツのホテル風
6F 女性向けのフロア
このホテルは他のホテルとの違いを出すために各フロアが全部違うコンセプトで作られています。

まず各階に2色のドアの色を決めます。(左の写真)
隣あった部屋はドアの色を違う色にしています。
ドアの色を決めてから廊下の絨毯や壁の色を決めます。
上の写真の4つのフロアの廊下は全く違う顔を持っています。
当然部屋の色の組み合わせも違ってきます。

客室は全部で46室。各フロアは全く違う4タイプの部屋を作り、隣と前の部屋は同じデザインはありません。
もし、団体やグループで利用した時、お互いの部屋を訪問した際の新鮮な驚きを楽しんでほしいと思いました。

またこのホテルのリピーターになっていただき、次はこの前と違う部屋に泊る楽しさを味わってほしいと思いました。

7Fに大浴場がある関係で、女性の方が素顔でも部屋にもどりやすいように6Fを女性向けとしてみました。
ドアの色(和の色です。)
1F ロビー
部屋ごとにベッドカバーやカーテン、壁の色家具などが違います。
バスルームに行かなくても、水道が使えます。女性の立場を考えてかな?
特別室のお風呂
ヒノキの丸いお風呂にしました。
円形の結構大きな木のお風呂なので浴室の完成後には入りません。壁やドアなどを作る前に入れました。
木のお風呂は数年後は交換しなければいけないので、次はどうやって入れるかが課題なんです。
ベッドにかけているのは内田陽子さんです。

下の写真は竣工時の写真です。家具が入っていませんので、実際はもっと違った雰囲気です。



なにしろ、このホテルがオープンして3日目に伺いました。
その数日前まで川崎さんは家具を入れるのに大忙しだったとか!

ほんとにいい時に福岡に行けたと思います。まだ宿泊客がそれほどいないときでしたので、客室の中も見せていただきました。

このお食事処でとーく会メンバーと懇親会もすることができました。
2Fには広い宴会場もあります。宴会は畳に座っても、いす式にでも出来るようになっています。
1Fのお食事処。堀ごたつ式ですが、料理は和食もフレンチもあります。

限られた
予算の中で
.工事には建設の予算が決まっていて、その中で完成させなければなりません。
最初に決めた壁紙やカーテンが予算に合わなければ雰囲気を変えないで、別の低価格のものに変更することもあります。
右の写真の壁。本当は壁に絵をかけたかったんです。
しかし、絵画を購入する予算はありません。
そこで壁紙を部屋の一部分、カラフルなものにして雰囲気を変えています。

いつも低姿勢で
みんなと仲良くなる
左のタイルの写真を見てください。大浴場(右の写真)の壁のタイルを拡大したものです。
これはモザイクタイルですが、見本のタイルを1個ずつはがして「この色とこの色を使ってください。Aの色を○%、Bの色を○%、Cの色を○%の割合で貼ってください。」と指示したもの。ブロック単位で貼ればいい作業が当然のことながら、この小さなタイルを1個ずつ貼ることになります。どんな職人さんだって嫌がります。
この物件では、ほかでも各部屋で内装が違っていて、職人さん泣かせでした。
ですから最初川崎さんは「顔も見たくない!」と言われるほど現場で嫌われていたそうです。
しかし、川崎さんはいつもにこにこして現場へ行き、「すみませ〜ん!やりにくい工事で。」と低姿勢を貫きました。
面倒なタイル貼りも自ら手伝いました。
でもそれが完成した時、その工事をやった人たちにも達成感があり、出来上がりの素晴らしさに満足して、川崎さんたちと一緒に喜びあったということです。

自分がまずそこの
住人になる
インテリアコーディネーターの仕事をやるとき、モットーにしていることは?
施主が自分と同じ趣味とは限りません。
シンプルでモダンなものが好きな人、古いものに愛着を持っている人、デコラティブなもの囲まれていたい人。
とにかくその家のオーナーに自分がなってみて、生活をするという立場で考えてみます。
自分の考えを主張しすぎて、施主や関係者と険悪になることは避けます。
おだやかにいつも笑顔で徹底的に相手側の希望も聞き、こちらからの提案にも耳を傾けていただきます。
そのためには、『これがだめならこれでどうでしょう!』と自分の引き出しはかなり充実させておく必要があります。
ですから完成して、物件をお客さんに引き渡すときのつらさは言葉に現わせないものです。

仕事をやるとき心がけていることは
       『とにかく仕事を楽しむ。施主とも現場の人とも仲良くなる。
        仕事は楽しく、遊びは真面目に』
仕事のために新築マンションとか住宅展とかよく見に行きますか?
そういう処にはあまり行きません。
その印象が頭の中に残ってしまって、意識せずそのまねをするようなことをしたくないからです。
自分の家を思った通りにもう一度建て替えてみたいと思いますか?
いいえ、もう人の家だけでおなかいっぱいになっていて、自分の家をどうこうしようとは思っていません。
この仕事に定年はありませんが、いつまでやろうと思いますか?
この仕事はきれいな仕事に見えて、実はとても体力と気力と根気のいる仕事です。
でも今、仕事が面白くてしかたありません。
一つの仕事が終わると、ありがたいことに次の仕事の依頼を受けることができます。
ですから体力が続く限り、続けて行きたいと思います。


  



Copyright (C) 2006 nagasakinishikou-talkkai. All Rights Reserved.