レインボーコンサートを
主催する「虹の会」会長
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山西美佐子さん(75)
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音楽を本土との懸け橋に
父親がバイオリンを弾き、姉二人はピアノを習う−。生まれた時か
ら音楽が流れる家庭で育ち、小学一年の時からピアノを習い始め
た。だが、五、六年生になってもあまり上達しない自分自身に愚痴
を漏らす日々が続いた。
ある日、台所で炊事をしていた母親から、切りかけの野菜で顔を
打たれた。母親は「上達しないことを先生のせいにしている。先生
を尊敬し、信頼しない限り上手にならない」と諭した。その言葉がピ
アノを習う姿勢を変えた。その後、二人の先生と出会う。中学時代
にはピアノの技術面で指導を受け、高校では毎日二時間、指をトレ
−ニングすることを学んだ。大学ではピアニストを目指して教育を受
け、厳しい練習を重ねた。今ある自分を育ててくれた歳月を振り返
る。
1957年大学卒業。同四月から91年の定年退職まで三十四年
間、高校の音楽教師を務め、うち三十年間は県立長崎西高で勤務
した。
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96年4月から夫の故郷壱岐での生活が始まる。「壱岐ではピア
ノ教室でも間いて子どもたちに楽しく教えながら余生を送るつもりだ
った」。だが、間もなく壱岐文化ホールと、ステージに置かれたピア
ノに出合う。ホールは広く、音響効果は素晴らしい、と言う。ピアノ
は世界最高級のドイツ製スタンウェイ。考えは急変し、胸が躍った。
「この指で、このピアノを弾いて島の人にピアノの音色の繊細さ、コ
ーラスの素晴らしさを昧わってもらいたい」。その思いが冷めないう
ちにと、コンサート開催に向けて準備を始めた。
現職時代の同僚や教え子たちと連絡を取り合い、音楽研究グル
ープ「虹の会」を結成。本土との懸け橋にと「レインボーコンサート」
と名付け、この年、第一回を開催。地元の音楽教師、長崎、島原両
市などの高校教師の協力で素晴らしいコンサートが開催できた。回
を重ねるたびにコンサートの評価は高まり、要望に応えて、内容充
実を図った。他に類のない魅力あるコンサートにするためにと、幅
広い年代層が出演できるプログラムを企画した。
県、市両教委ほか多くの支援・協力で今年2月、12回目のコン
サートを開催。小、中、高校生のコーラス、器楽、和太鼓演奏をはじ
め島内外の会員による質の高いクラリネット独奏やコーラス、独唱
などで聴衆を魅了した。
「後期高齢者なのですよ」と笑顔を見せ、「来年はベートーベンの第
九の大合唱ができるよう練習に取り組みたい」とピアノに向かいな
がら話した。
(壱岐支局・琴岡英彦)
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